ソフトバンクダイエーホークス

  • 『みつくりやまヒコーキ』より (1998年・旧稿です)



『ハラカラ手を出して』
南北線の終電を乗り過ごすと南の島にでる
赤羽岩淵を過ぎると終電だけは車庫に向かわず
南の島に最後の運行をする
ながいながいチューブを通って
地面に横たわる土地に出る

駒込でおりるつもりだったが
思い直して端の席にすわりなおした
拳銃に弾をこめはじめた

自分をぶちぬくまえに
思いださなければならないことはいっぱいあると聞いていた
けれど楽しかったとか悲しかったとかいう思いはなかった
地下鉄のはずの車両の窓から
真っ青な空と水着姿の娘をみた

拳銃を抜く練習だけはいっぱいした
ノドから手が出るほどの何か
ハラカラ手を出してぶちぬかなければ
黒い小さな穴を覗いた
右手のヒトサシユビが意志をもった

けれど 
赤羽岩淵に止まったとたん水が穴からあふれだした
車掌さんにみつかったら失敗する
僕はあわてて銃口をくわえた
水はあとからあとからあふれだして
ごくごくノドからハラへと流れた
ふと南の島に胃薬はあるかなと思った
そのあとのことは何も憶えていない