恋に上下の隔て無し

  • 『みつくりやまヒコーキ』より (1998年・旧稿です)



『ボイルオーバー』

バイバイした二人の少女
ボイルオーバーした蒸し暑い夜
ドキュメンタオンタバイバイ
馬鹿騒ぎのヒヒインクウウン
すらすらしゃべるまやかしの蝶
蝶うざったい夏のロマンスカー
バイバイした二人の少女
つたの葉の笑いの台詞の戦い
ぺきぺき上手に折ったザラバンシ
提出し忘れた引き出しの奥
ボイルオーバーした水追いの県道
べらべらしゃべるまやかしの蝶
ぎしゃぎしゃ揺れる車両と車両のあいだ
蝶うざったい夏のロマンスカー

アリジゴクはやまを登りてカゲロウになり
一日で死ぬための何十年間
アリジゴクは登りてカゲロウになり

バイバイした一人の少女
ドキュメンタオンタバイバイ
ボイルオーバーした芯のないレール
灼熱のホームの上りと下り
どちらも選ばず沸騰して消えた