靴磨きの思い出

  • 『みつくりやまヒコーキ』より (1998年・旧稿です)




『シングルパイプビーム』

シングルパイプビームは
やまの中腹をぶち抜いた通りだ
やまにスウパプカーが流行った時に
オサのガラジがつくってくれた
今は臭いといって誰もスウパプカーに乗らないので
歩きびとにとっては格好の散歩道になっている
僕はそのシングルパイプビームを通るのが好きだ
酔った金曜日に革靴で通ると
カパスン、カパスンと足音がたまらなくいいのだ
風の強い日にシングルパイプビームを通って帰ると
ビーム中でたくさんのゆうれいの靴音がして
運がいいと粗大モノに出会ったりできる
僕の部屋の椅子はここでそろえた
うす青のやつが一番ふかふかだ

けれどこの頃は気をつけなければいけない
アノミボ酸が天井から染み出してくる
アノミボ酸は無毒なのだけれど
シャツの背中に入ってひやっつとする