2020年 おそらく 最後の 蝉の抜け殻
おそらく今年最後であろう、蝉の抜け殻をみた。
斜めにのびた枝に、力強くしがみついていた。
彼の孵化は、決して遅くはない。
とまり木の彼の背中を、色とりどりの落ち葉が舞っていく。
最終楽章は幾度もくりかえされる。
何かがここで終わって、何処かで何かがはじまって。
君も、僕も、セカイも、中途半端に悪人でよかった。
完全な善人には、味わえない冷たい風の中の孤独。
そんな奴が本当にいたらの話だけど。
奴が自分自身は、完全な善人で善行だと、もし信じて疑わなかったら、ファシズムだ。
こんなに恐ろしいことはない。
僕ら、みんな、夕暮れ時の軽犯罪者だ。
最後の蝉の抜け殻を撮りながら思った。
心配しなくていい、現行犯じゃなければ、胸をはって還れる。