キヅキ キツツキ
僕は写真をそこまで好きではないかもしれない。
タダファインダー越しにみえるヒトと
どんな形でもいいから交流をもちたくて、
ものいわぬ草木と、コミュニケーションがとりたくて、
派手な格好をして大きなカメラをぶらさげて、
一日300カットとかシャッターを押して、
自分で選ぶのが最近はしんどくなって、
でも、寝て目が覚めると、また派手な格好に、ハンチングをかぶり、
白髪交じりの髭をマスクで隠して、
重いカメラを首からさげて、
きょうはどんな新しい出会いがあるか、
胸ふくらませ、
部屋の鍵もかけず、夜明けの街を歩き出す。
そして、自分では何一つも創り出さず、ファインダーを覗き、表層だけをかすめとっていく。
僕はものいわぬ路上にはえた草木が大好きだ。
そして、ヒトはもっと大好きだ。
だから、いわゆる写真とカメラが好き、ということではないかもしれない。
演劇は生涯大好きだけど。