存在するよきものはすべて独創の結果である ジョン・S・ミル

  • 『みつくりやまヒコーキ』より (1998年・旧稿です)


『きこりのバリン』

きこりのバリンは居酒屋でひとりと気づく
わやわやがいがいのまっただなかで
一瞬ピキンと静かになった
きこりのバリンは杯を上げ
目の前に誰もいないのを知った
たくさん顔は並んでいたが
静かな顔はノートパソコンから動かなかった
12人の弟子で居酒屋にきて
ひとりに気づいたのはバリンだけだった
バリンは古いものばかりあつめていたが
それはこの国ではよわすぎた
いつもまにかウラギリモノになった
木を誰より好きだったバリンは
テレビも見ずに木とともにいた
一瞬ピキンと静かになったのは
11人が一緒に改行キーを押したからだった

11人のモニターにはこう書いてあった
「サンタはいるけどカッパはいないと思うと安心だ」

バリンは一人で乾杯をいい
そこにはいない自分の父親と酒を飲んだ
そしてその夜はしこたま酔った